大谷地病院認知症疾患サポートセンター便り

大谷地病院認知症疾患サポートセンタの活動をご紹介します。

認知症予防サークルわっこで臨床美術「植木鉢に描く地中のアナログ画」をしました

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臨床美術に取り組むわっこの皆さんの様子

令和最初のわっこは、臨床美術で始まりました。

春らしいとてもすがすがしいお天気でしたが、天気予報では「突然の雷雨にご注意を」とのことです。会場の準備をしている内に、空が曇ってきて、冷たい風が吹き始め、「タイミング悪かったらにわか雨に濡れてしまうかも・・・。」と心配になりました。

でもさすが、わっこの皆さんは日頃の行いが良いのか☀女☀男ぞろい。「こんにちはー!」と会館に到着される頃には雨が降ることなく天候は回復しました。

本日は、総勢12名の方にご参加いただけました。

今年3月で終了となった、「ココカラ若返りサポート」参加者の3名も来て下さり、プチ同窓会気分の中、臨床美術「植木鉢に描く地中のアナログ画」の始まりです。

絵を描く、となると「苦手で、今日はやめとこうかなと思ったんだけど・・・。」という方々もちらほら。

でも、いざ植木鉢にオイルパステルの色をのせていくと、感触や色からイメージをどんどん膨らませ、夢中になって植木鉢に自分の世界を展開させていきました。
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仕上げにスプレーをかけると、色がグーンとはっきりします。皆さん、自分の完成作品を手に、とても満足げにされていました。
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最後は作品を並べて、鑑賞会を行いました。作品を作っている時に工夫したところや、作品の色使い、特徴的なところをみんなで褒め合います。作品を褒めらると、自分自身を認められたような、少し恥ずかしいけれど誇らしい気持ちになります。
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最初は緊張と苦手意識で取り組み始めましたが、終わってみると「楽しかったー!」と素敵な笑顔でいっぱいになりました。

臨床美術とは?

今回認知症予防サークルわっこで実施した臨床美術は、美術家と医師が共同で開発した美術プログラムです。

日本人の8割近くが「絵は見るのは好きだけど描くのは苦手」と感じているそう。それは、学生の時に「形や色を見本通りに再現できないと減点」という教育を受けてきたからかもしれません。

でも、芸術は本来美術家や絵が上手な人だけがやる権利を与えられているというものではありません。感じた事を感じたままに表現することに、「上手・下手」という評価を与えるものでもありません。

臨床美術のプログラムは、描く対象を五感で感じ、感じた事を表現できるようにとても巧妙に設計されています。

感じたことを思いのまま表現する、ということは普段なかなかないことです。言葉で感じたことを思いのまま表現するということをしてしまうと、社会の中では軋轢を生んでしまいますよね。

想いのまま描くこと、感じたことをストレートに表現すること。それは誰にも迷惑をかけない、自己表現です。制作過程での工夫や、作品の良さを他者から認められるということは、自分の表現やそこに至る努力や工夫を認められることにつながります。
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定期的に臨床美術をしていると、子供でも、大人でも、高齢者でも、みんながいきいきとして幸せな気持ちになるのです。

実際に臨床美術は認知症予防学会でも「認知症高齢者の認知機能を改善する効果がある」と認められています。高齢者だけではなく、子供の発達支援やビジネスマンのストレスマネージメントなど、様々な分野で取り入れられています。

もし、お近くで臨床美術をする機会があったら、ぜひ体験してみることをお勧めします。

植木鉢に描く地中のアナログ画の特徴

臨床美術のプログラムには、平面の課題や工作の要素を持った立体の課題があります。

今回は、紙ではなく素焼きの鉢に描くという課題です。絵を描く面は平面ですが、できる作品は立体で奥行きがあります。

この課題の中にはオイルパステルで描いたり、色を溶かしたり、削ったりといった様々な工程が、まるで物語のように展開していきます。

これまでの生活の中で触れた土の感触や地面の中の世界を思い描きながら、素焼きの鉢の冷たい感触、鉢にオイルパステルの色を乗せていくざらざら・ごつごつした感触、オイルで溶かしていくぬるぬるした感触といった触覚刺激を楽しんでいきます。

溶かしたり、加えたり、混ぜ合わせたり、削ったりといった色の変化を視覚的に楽しんでいく要素もあります。
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記憶機能・感覚器からの刺激・空間認知機能など多彩な方面から脳を刺激する効果がある素晴らしいプログラム構成となっています。

認知症予防サークルわっこでは、臨床美術だけではなく様々なことを通じて、みんなでワイワイと楽しく認知症予防を実践しています。

次回、5月16日は「春野菜の栄養」がテーマです。桜餅も作ります。

認知症予防サークルわっこは毎週木曜日13:30~15:30まで札幌市厚別区にある大谷地団地町内会館で実施しています。お申し込みは必要ありません。お近くにお住まいの方は、参加費500円とわくわくした気持ちだけ持ってお気軽に参加してください。