臨床美術「年賀状 雪」を実践している皆さんの様子
11月6日、軽度認知機能障害回復プログラムなつめでは、恒例の臨床美術を行いました。今回の臨床美術プログラムは、「年賀状 雪」というプログラムです。
まだ11月になったばかりなのですが、年賀はがきは11月から販売開始です。今年はオリンピック東京2020寄付金付き年賀はがきも販売されていますね。参加者の皆さんが年賀状を購入する前に!と今回のプログラムを選んでみました。
これまで臨床美術では「ナスの量感画」「ベイビーキャロット」「サツマイモの量感画」と野菜がテーマになることがほとんどでした。いつも本物の野菜を目の前において描いていました。
今回のプログラムは「雪を描く」というものです。まだ札幌に初雪が降っていないので、雪をイメージするのはなかなか難しいかもと心配しました。
でもさすがに皆さん道産子ですね。雪の思い出を聞いていくと、どんどん雪で遊んだエピソードが膨らんできました。
「そりに乗って、馬車の後ろにこっそりつかまるの。昔はおてんばだったのよー!」とお一人がエピソードを披露すると、「私も同じことやったわー!!」という声が上がりました。
思い出とともに、雪の風景や感触・戯れていたときの気持ちなど様々なものがよみがえってきます。
静かに降り積もる雪、風に舞う雪、月明かりに照らされた雪、朝日を浴びた雪など、同じ雪でもいろんな表情を持っています。そんなイメージを自分が選んだ色の紙の上に表現していきました。
見本がないものを描くと、思い切りよく描き進んでいける方と手が止まってしまう方と極端に分かれます。手が止まってしまう方は、雪のイメージを膨らませることが難しかったり、「上手く描けない」ということにとらわれてしまっていることが多いようです。
もう一度雪の思い出をたどってみたり、道具を変えてみたり、苦労や試行錯誤をすることも作品ができた時の喜びに代わっていきます。
出来上がった作品をはがきにコラージュし、スタンプを押すと、世界に一つだけの年賀はがきの出来上がりです。
こんな手作りの年賀はがきが届いたらすごくうれしいですよねー。
「家でもっとたくさん作ります。」と今回仕立てた残りの絵を皆さん大事に持ち帰っていました。
臨床美術プログラム「年賀状 雪」の特徴
臨床美術は、どんな方でも絵や造形を通じて自己表現を楽しむことができるよう開発された美術プログラムです。高齢者の介護予防、認知症発症予防・症状の改善、働き世代のストレス緩和、子供の感性教育などに効果が期待できる芸術療法です。
臨床美術には平面や立体の数多くのプログラムがあり、それぞれのプログラムに特徴があります。
今回の「年賀状 雪」は記憶の中にある「雪」という存在に焦点を当てて描いていきます。雪景色を描く風景画とは違い、一枚の紙にランダムに様々な表情の雪を描いていきます。
最終的に切り取ってしまいます。最初から切り取ることを前提に描いていくので、「風景画を描こうとして上手くいかず悲しくなる」ということはありません。いろんな表情の雪を、思い思いの色と道具を使って描いていきます。
どんどん描いていける方も、悩んでしまって手が止まりがちな方も、「失敗する」ということがないのです。なぜなら、切り取った1枚の絵が葉書にコラージュされると、必ずと言っていいほど素晴らしい味わいを持つからです。
そしてこの作品の素晴らしいところは、「年賀状として作品が役割を持っている」ということではないでしょうか。
日頃お世話になっている方やご無沙汰しているお友達に、ご挨拶の気持ちと一緒に作品を作っているときの幸福感も届けることができます。受け取った方は、写真付きの年賀状を受け取るよりも元気な姿を感じ取ることができるかもしれません。
作品を通じて、コミュニケーションが生まれるというのは素晴らしいことですね。
軽度認知機能障害回復プログラムなつめは札幌市厚別区にある大谷地病院デイケアで行っているプログラムです。ご興味のある方は大谷地病院にお電話いただくか、ホームページのお問合せホームからご連絡ください。