臨床美術とは
大谷地病院で4月より始まった高齢者地域生活支援プログラムなつめでは、月に1回臨床美術を行っています。
臨床美術というのは、美術家と医師が共同で開発した美術を使った芸術療法プログラムです。臨床美術プログラムに基づいて絵やオブジェを楽しみながら作ることで脳を活性化し、認知症予防やストレスの緩和、子供の感性教育などに効果が期待できます。
認知症予防学会でも、「認知症の患者の認知機能の改善効果」と「認知症患者のBPSDを改善する効果」が認められています。
認知症の患者様は新しい記憶を積み重ねていくことが苦手になります。そして、物忘れがひどくなり、日常生活でうまくいかないことが増えてきたことに不安や恥ずかしさを感じている方が多いのです。
臨床美術は絵を描くことが苦手な方も美術の表現を楽しむことができるよう、ゆるやかにプログラムの世界に引き込みます。恐る恐る引いた最初の1本の線から、いつの間にか自分の表現に没頭していくのです。
臨床美術を行っているときは、美術表現を通じて連続した自分自身を取り戻すことができます。そして、作品という形になります。作品の良さや制作に向き合った時間を鑑賞会でスタッフや他の参加者と共有し認めてもらうことで不安などの負の感情を薄めていくことが期待できます。
高齢者地域生活支援プログラムなつめで臨床美術を行う理由
高齢者地域生活支援プログラムなつめで臨床美術を行うには理由があります。
認知症予防にとって重要なのは運動と脳トレ、そして栄養や睡眠などの生活習慣です。
軽度認知機能障害回復プログラムなつめでは、栄養や睡眠などの生活習慣を含めて包括的に認知症予防に取り組んでいますが、高齢者地域生活支援プログラムなつめはもっと緩やかに「みんなが集まって運動と脳トレを通じて認知症予防をしよう」というコンセプトです。
運動は「あへあほ体操」を行っていますが、脳トレの一つとして臨床美術を行います。
脳トレは新しいことを行う事や、集団で行う事が有効だと言われています。
絵をかくことが好きな方は実はとても少なく、日本人の多くは苦手意識が強いのです。その苦手な「絵を描く」ということを楽しい活動として再認識していく過程で脳トレ効果が生まれると期待できます。
また、自分の表現に集中し、制作を進める過程で様々な脳機能を使いますし、指先を使ったり感覚機能を使って感じることで脳を活性化させます。
そして、作品ができ、制作過程を含めて作品の良さを認められることが自信につながり、生活を豊かにするのではないかと考えています。