高齢者地域生活支援プログラムなつめの目的
大谷地病院では昨年6月から、「軽度認知機能障害回復プログラムなつめ」というショートケアを実施しています。
MCIの方の認知症への移行を予防することや、認知機能の維持を目的としたプログラムです。
MCIの方を対象としてプログラムを作りましたが、実際運営してみるとMCIよりももう少し先の初期の認知症へのサポート体制が少ないということを実感しました。
介護度の低い軽度認知症の方は介護保険サービスを十分に活用することができません。しかし、初期の段階でしっかりとリハビリテーションを行う事が認知症の進行に重要なことは明白です。
そこで、現在のなつめに加え、もう少し広く対象者を広げ、MCIの方も、軽度認知症の方も、日中活動が少なくなりがちな高齢期のうつの方も通えるデイケアを週に1回始めることとなりました。
同じような悩みを抱えた同年代の方が集まり、体と認知機能の維持に良い活動を通じて交流することで地域で自分らしく豊かに生活を続けることを支援することを目的としています。
高齢者地域生活支援プログラムなつめの内容
認知症の発症予防や進行抑制には「運動」「食生活」「睡眠」「知的活動」をまんべんなく行う事が重要です。
高齢者地域生活支援プログラムなつめでは「運動」と「知的活動」をプログラムの軸にしています。
午前は「アヘアホ体操」を行います。
アヘアホ体操は「ドローイン」という、息を吐きながらおなかをしっかりとひっこめる運動を使いながらインナーマッスルを鍛え、全身の関節や筋肉のバランスを整えていく運動です。
今回、アヘアホ体操の創設者しものまさひろ先生に指導に当たっていただくことになりました。
午後は、認知症予防学会で認知症予防効果のエビデンスが認められている音楽療法と臨床美術、管理栄養士指導のおやつ作りを行います。
高齢者地域生活支援プログラムなつめの様子
高齢者地域生活支援プログラムなつめは、本当は3月3日から開始予定でした。
しかし、直前に新型コロナウイルス感染症が拡大し、開始を見送ることになりました。
とりあえず3月10日まで動向を見定めていましたが、感染は収まる気配がありません。一度中断や開始の延期をしてしまうと、開始時期の見定めが難しかったのですが、このままずるずると開始時期を延ばしていると、参加を希望してくださった方々へよくない影響があると感じました。
そこで感染対策をしっかりと行い、それでも感染のリスクがあることを承知して頂いたうえで3月17日開始という判断をいたしました。
参加希望の方のほとんどが、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを承知の上参加いただくことになりました。
初回はほとんどの方が初対面で、スタッフもメンバーさんもみんな緊張していました。
それでも、アヘアホ体操で「あへーあほー!」と大きな声を出したり、しもの先生の軽快なトークで笑ったり、「なるほどー!」と感心するようなレクチャーを受けるうちに緊張は少しずつほどけていきました。
まだ肌寒い時期のはずなのですが、体がぽかぽかになり、窓を開けて運動をしました。体をすみずみまで動かして羽が生えたように軽くなりました。
午後は、臨床美術士でもあるなつめのスタッフによる臨床美術「二人で描く・線と色の抽象画」というプログラムを実施しました。
二人で一枚の絵を、思い思いに線や色を交互に書き込みながら完成させていくプログラムです。
初対面同士でなかなか緊張して交流できなかったのですが、絵を間に挟み、自己主張とその受容というコミュニケーションが繰り返されていきます。
躊躇なく線や色を描いて行く方、くるくるとした曲線などアイデア満載の表現を楽しむ方、慎重に時間をかけて描いて行く方、お互いに相談しながら描いて行くグループなど、取り組み方も個性的です。
そして、完成した作品はどれも素晴らしい個性が表現されていました。
みんながドキドキしながら迎えた高齢者地域生活支援プログラムなつめの初日は、参加者の皆さんの笑顔で締めくくることができました。