大谷地病院認知症疾患サポートセンター便り

大谷地病院認知症疾患サポートセンタの活動をご紹介します。

軽度認知機能障害(MCI)回復プログラムなつめが始まりました

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軽度認知機能障害(MCI)とは

皆さん、「軽度認知機能障害」もしくは「MCIもしくは認知症予備軍という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

軽度認知機能障害・MCI・認知症予備軍という言葉はいずれも、「まだ認知症になっていないけれど脳は認知症の状態に近づいてきていて、認知症の症状があらわれてきている状態」です。

 

糖尿病や高血圧も、ある日突然糖尿病や高血圧になるわけではなく「ちょっと血糖値が高いから気を付けて。」「血圧高いよ、塩分控えて。」という「予備軍」の状態を経て糖尿病や高血圧という状態になります。

 

認知症も同じで、ある日突然認知症になるのではなく、認知症の症状が現れる20年ほど前から脳に認知症をおこす病変が始まっていきます。

 

まずアミロイドβなどの脳細胞を破壊する物質がたまり始め、少しずつ脳細胞を破壊していきます。

 

脳細胞が破壊されたことによって認知機能が障害され、「物忘れがとてもひどい。」などといった目に見える変化が表れ始めるのです。

 

認知機能の低下が少し見られても、日常生活は大体変わらず行うことが出来ます。ですから、「軽度認知機能障害」は認知症ではないのです。

 

では、軽度認知機能障害はどうなっていくのでしょう。

 

軽度認知機能障害と診断された方は、1年あたり10%の方が認知症を発症し、5年後には半分の方が認知症を発症します。

 

しかし、軽度認知機能障害と診断されても、14%~40%はもとの健康な状態に戻ることが出来ます。

 

軽度認知機能障害から健康な状態に戻るためには、認知症予防対策をしっかりと行うことがとても大切になってきます。

軽度認知機能障害(MCI)なつめにできること

令和元年6月、医療法人重仁会大谷地病院では、北海道では他院に先駆けて軽度認知機能障害から回復するためのプログラム、「軽度認知機能障害回復プログラム なつめ」を開始しました。

 

認知症予防専門士と、管理栄養士がしっかりとサポートし、認知症予防効果につながる生活習慣を身に着けていただくことを目的にした1クール6か月のプログラムになっています。

 

プログラムは、学び・実践・サポートの3本柱から構成されています。

 

  • 学び:認知症予防に効果のあること・栄養の考え方を学びます
  • 実践:運動・調理・芸術療法など認知症予防効果の高いプログラムを実践します
  • サポート:運動や栄養など日常生活の記録を通じ認知症予防を取り入れた生活を身に着けられるようサポートします

 

これらの事をやみくもに実施するのではなく、事前に認知機能や血液検査などの検査を行い、その方にあった認知症予防プログラムを立案し、個別にサポートしていきます。

軽度認知機能障害(MCI)なつめのご案内

軽度認知機能障害回復プログラムなつめは次の通り実施しています。

 

  • 実施日時:毎週水曜日10:00~12:00
  • 内容:本山式筋力トレーニング・臨床美術・栄養指導・調理・認知症予防講座・シナプソロジー・コグニサイズ・ふまねっとなど
  • 参加費:400円~1200円程度(保険適応)

本山式筋力トレーニングとは

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筋肉は脳からの命令によって動いています。

 

ちょっと難しい話になりますが、筋肉は脳からの信号を受けて動いたことを、筋紡錘というところから脊髄→脳幹→小脳→大脳皮質へと信号を返して報告します。この回路を「感覚神経」と言います。

 

軽度認知機能障害になると、この感覚神経の働きが弱くなってしまう方が多いのです。

 

感覚神経に問題のない方がスクワットをすると、途中で太ももがとても痛くなって続けることが難しくなります。

 

しかし、軽度認知機能障害の方は、感覚神経のつながりが弱くなっているため筋肉の痛みが脳に伝わらず、痛みを感知できなくなりいつまでもスクワットを続けていることが出来るようになります。

 

本山式筋力トレーニングは、筋肉の動きに意識を向けながら筋力トレーニングを行うことで、感覚神経の働きを正常化していきます。

 

臨床美術

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臨床美術は、美術家と医師が共同で開発した芸術療法です。認知症予防学会では「認知症の方の認知機能を向上させる効果がある」と認定されるなど、確たるエビデンスがある芸術療法です。

 

軽度認知機能障害回復プログラム なつめでは、臨床美術の資格を持った認知症予防専門士が臨床美術を行います。

 

臨床美術についての詳しい解説は下の記事をご覧ください。

ohyachi-hp.hateblo.jp

 

栄養指導

人間の体は食べた物でできています。健康と食事は切っても切れない関係です。認知症発症と栄養不足はとても深い関係があることもわかっています。

 

軽度認知機能障害回復プログラム なつめでは管理栄養士が普段の生活で実践しやすい認知症予防効果のある栄養の取り方についてお伝えしていきます。

 

調理

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料理を作ることはたくさんの認知機能を使います。認知症予防効果のある食材を使い、バランスのとれた食事を日常生活で取り入れやすいよう、献立の立案から始め、調理実習を行います。

 

栄養指導と脳トレの両方の効果のあるプログラムです。

 

認知症予防講座

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認知症予防に効果的な生活を自然に遅れるようになることが、軽度認知機能障害回復プログラム なつめの目標です。

 

そのためには、なつめで勧められることがなぜ認知症予防につながるのかを理解している必要があります。

 

日常生活の中で認知症予防に効果のある生活を送るためのポイントを、認知症予防専門士と一緒に学んでいきます。

 

シナプソロジー・コグニサイズ・ふまねっと

体を動かしながら頭を使うと、脳の広い範囲を刺激することが出来ます。体を使った脳トレは様々な方法が研究されていますが、その中でもエビデンスがあるといわれているシナプソロジー・コグニサイズ・ふまねっとを楽しく実践していきます。

参加までの流れ

  1. 大谷地病院にお電話いただき物忘れ外来の受診予約を取ってください。
  2. 物忘れ外来を受診し、軽度認知機能障害の診断を受けてください。
  3. 担当スタッフの説明を聞き、納得されましたら見学してください。
  4. 見学の上参加希望であれば検査を実施します。
  5. 検査終了後の週から開始となります。

 

すでに他院で軽度認知機能障害の診断を受けている方もかかりつけ医を変えることなくご参加いただけますので、お問い合わせください。

 

  • 医療法人重仁会 大谷地病院デイケア 軽度認知機能障害回復プログラム なつめ
  • 住所:札幌市厚別区大谷地東5丁目7-10
  • 電話:011-891-3737